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広島高等裁判所岡山支部 昭和43年(ネ)33号 判決 1972年10月02日

控訴人

竹内澄子

被控訴人

竹内しげ訴訟承継人

山口芳忠

右訴訟代理人

横田勉

主文

本件は昭和四七年四月一九日成立した裁判上の和解により終了した。

本件期日指定後の訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一、控訴人主張の裁判上の和解が成立したこと、右和解が控訴人の訴訟代理人弁護士宇山謙一によつてなされた(控訴本人は和解当日不出頭)ことは被控訴人が明らかに争わないので自白したものとみなす。

二、控訴人の主張は、要するに、(一)訴訟代理人が右和解期日を控訴人に通知しなかつたため、右期日を知らず、出頭できなかつたこと、(二)和解内容が控訴人と訴訟代理人との間の約束に反すること、(三)和解内容が控訴人に不利益であること、の三点にあるものと解せられる。

三しかし、かりに右のような事実があつたとしても控訴人の和解無効の主張は理由がない。

(一)  本件記録によれば、右和解期日は昭和四七年三月一日の和解期日に続くもので、右三月一日に控訴代理人が出頭して次回四月一九日の期日の告知を受けた以上、裁判所の四月一九日の期日における和解手続の施行は適法なものである。

(二)  民事訴訟法八一条三項は、「訴訟代理権を制限することはできない」旨を規定している。これは訴訟法が訴訟手続を安定し、円滑にするために当事者と訴訟代理人とが訴訟委任契約において特別の約定をしたとしても、特段の事項(同条二項に規定しているもので、和解もその一つである)を除き、その効力を右両者間だけに留め、裁判所および事件の相手方にまで及ぼさないものとしたものである。従つて本件のように和解権限も与えられた(このことは記録添付の委任状から明白である)訴訟代理人については、控訴人はその訴訟代理権を制限することはできず、訴訟代理人は和解手続において事件の解決のために一切の互譲手段をとることができ、これに対応する私法上の代理権をも与えられたと同様な扱いになるものであり、控訴人主張のような特約違反があつたとしても、和解の効力を左右するものではなく、訴訟代理人と当事者本人との間の問題となるに過ぎない、と解するのが相当である。

(三)  和解内容が当事者の一方に不利益が多大であつたとしても、そのことだけで和解の効力がないということはできない。

四以上の次第で、本件和解が無効なものとは認めがたいので、本件訴訟は本件和解によつて終了したことが明らかであるから、その旨の宣言をし、本件期日指定申立後の訴訟費用は敗訴当事者の控訴人に負担させることとし、主文のとおり判決する。

(辻川利正 小湊亥之助 永岡正毅)

別紙・目録《省略》

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